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東京地方裁判所 昭和41年(刑わ)4298号・昭41年(刑わ)4297号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕三 罪となるべき事実

被告人らは、自ら本件土地借り受けの交渉にあたり、或は主として交渉をした被告人志和池からその交渉の経過を聞き更には国際家畜と綱島との前記紛争の過程で賃貸借契約書を見るなどして、本件土地は賃借したものであつて売買ではなく従つて田中彰治のいうような念書も存在しないことを知りながら、田中彰治の指示に従い次のとおり偽証した。

(一) 被告人志和池の偽証

被告人志和池は、昭和三九年三月一二日、東京都千代田区霞ケ関一丁目一番一号の東京地方裁判所において、原告綱島、被告国際家畜間の賃借権設定登記等抹消及び土地明渡請求事件並びに、原告国際家畜、被告綱島間の所有権移転登記請求事件の併合事件の第一五回口頭弁論期日に証人として尋問された際、宣誓のうえ、裁判官安藤覚に対し本件土地は国際家畜が綱島から買受けたものであつて賃借したものではなく、賃貸借契約の形式にしそのような契約書を作つたのは、綱島から母親が土地売却に反対するので賃貸借の形式にしてくれと依頼されたからで、綱島からは実際は売買であつて母親が死亡したら名義を移す旨の念書が取つてある旨虚偽の陳述をした。

(二) 被告人田中稔の偽証

被告人田中稔は、同年五月二八日、同裁判所において、同事件の第一六回口頭弁論期日に証人として尋問された際、宣誓のうえ、同裁判官に対し、同趣旨の虚偽の陳述をした。

(三) 被告人堀川の偽証

被告人堀川は、同年七月三〇日、同裁判所において、同事件の第一七回口頭弁論期日に証人として尋問された際、宣誓のうえ、同裁判官に対し本件土地は国際家畜が綱島から買受けたものであつて賃借したものではなく、賃貸借契約の形式にしそのような契約書を作つたのは、綱島から母親が土地売却に反対するので賃貸借の形引にしてくれと依頼されたからである旨虚偽の陳述をした。

(弁護人の主張に対する判断及び量刑の理由)

弁護人のうちには、被告人らは前記民事事件の裁判確定前自白したものであるから、刑法第一七〇条により刑を免除或は減軽されたい旨主張するものもあるけれども、被告人らが前記民事事件の判決確定前に自白したとはいえ、これは綱島の告訴に基づき検察庁が捜査を開始し、被告人らも取調べを受けるにいたつた際当初はこれを否認して極力弁解しておりながら、追求された結果漸く自白したものにすぎないし、その自白も前記民事事件の第一審判決後であつて被告人らの偽証によつて誤つた判決がなされる可能性がなかつたわけではなく、更にはその偽証の内容も賃借したものを買受けたものであると陳述するなど全く虚偽の陳述をしたものであることなどを考慮すると到底右主張を採用し、刑の免除或は減軽をすることはできない。

およそ偽証は著しく裁判の公正を害するものであり、偽証が横行するようでは到底公正な裁判を期待することはできず、適正な法秩序を維持することはできない。従つて国家は偽証に対し厳しい態度をもつて臨んでいるのであるが、社会の一部にはこれを充分認識せず偽証がなされる例があることは、当裁判所の極めて遺憾とするところである。

ところで被告人らは、前判示のごとく綱島次男との本件土地の借り受け交渉に関与したり或は同人との紛争の過程で賃貸借契約書を見るなどして、本件土地は賃借したもので買い受けたものでないことを充分知悉し、更に、田中彰治が、これを買受けたものであると主張して訴を起し、当時においても時価一億円にものぼる本件土地を自己の支配下におさめようと企図していることを知りながら、前判示のごとき虚偽の陳述をなしたものであり、更にその証言内容も前記のごとく全く相反するものであつて、綱島に対し物心両面にわたり甚大な損害を与えたものであるが、これらの事実に前記のごとき偽証罪の重大性を併せ考えると、被告人の刑責は重いといわなければならない。

然しながら被告人は前判示のごとくいずれも田中彰治方に使われていたため偽証を命ぜられるような結果になり、同人方で働くことによつて生計をたてていたため止むなくこれに応じたものであつて、これによつて格別の利益も得ておらず、又田中彰治側からの本訴請求も棄却され控訴はしたけれども同人において前記主張を維持する意思はなく、従つてその点での綱島の実害はなく、更に被告人らはいずれもその非を深く反省し今後犯罪を繰り返さない旨誓つており、被告人堀川が昭和一七年頃物価統制令違反で取調を受けたことがあるほかは各被告人には前科は勿論違反歴がないことなど諸般の事情を勘案し、被告人らを各懲役一年に処し、この裁判確定の日から三年間それぞれ右刑の執行を猶予することとした。(播本格一 近藤和義 鈴木之夫)

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